君と奏でるノクターン

3話/凍えてる心

しんしんと雪が降る。
冷たい空気が頬を撫でる。

手袋をしていても悴む指、詩月は口元に当て息で暖める。

白く積もる雪を踏みしめると、キュッキュッと靴音が鳴る。

コートの上から大判のストールを羽織り、ヴァイオリンケースを 包むように抱きしめる。

息をつくたび、胸の奥で風の泣く音がする。

氷点下――。

冷たい空気に、体が悲鳴を上げている。

通りを行く人々の頬が寒さのためか、微かに赤く吐く息が白い。


滑らないよう、用心して歩く。

先を急ぎ歩を速めたいのに……。


思うように歩が進まない。

冷えた体、震えが止まらない。


目眩がしてきそうなのを詩月は、気力で持ちこたえながら歩く。


駅舎が間近に見え、ホッと一息。


「詩月」


ずしりとした低音に呼び掛けられ、詩月は顔を上げる。
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