君と奏でるノクターン
ミヒャエルの視線、ミヒャエルの叫び声が頭を離れない。

駅舎を歩き、電車に乗り、電車に揺られる間も心が騒ぐ理由を考える。


横浜での生活中。
様々な噂、批評、批判、中傷、苛め、声援、激励などは様々あったように思う。

だが、今ほど好き勝手に掻き回され、質問を投げ掛けられることはなかった。


行く先々で、必ず出くわすミヒャエルという学生。

彼がどういう素性の学生なのかも、詩月は知らないし興味もない。

同じ教授に師事している――詩月は、それだけで十分な情報だと思う。

彼が上手いのか下手なのかすらも、詩月はどうでもいいと思う。

カフェ「アマデウス」で、ピアノのストラディバリウスとまで言われる名器「ベヒシュタイン」を弾いた時。

詩月は自分が気まぐれで、好き勝手に弾いた「アヴェ·マリア」の演奏に、ミヒャエルがよく合わせられたなとは思う。



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