君と奏でるノクターン
だが、詩月は横浜で在席している大学、聖諒学園の先輩、ヴァイオリン科の安坂貢の方がミヒャエルより優れた弾き手だと感じた。


貢のヴァイオリンの方が合わせ易かったし、心地好いと感じた。


ミヒャエルには、ヅカヅカと踏み込んでほしくないことにまで、土足で踏み込まれている気がする。


詩月は、陰口を叩かれるのを善しとはしないが、無遠慮に何でも首を突っ込んでこられるよりはマシだと思う。


話したくもないことを執拗に聞いてきたり、知られたくないことをわざわざ調べて真意を問う――そんな輩は、今まで周りには居なかったなと思う。

同じ教授に師事しているだけで、何ら興味もなく親しくしたいとも思えない学生が、気づけばいつも側にいる――ことが、詩月は不思議でならない。


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