君と奏でるノクターン
血液循環が正常でないため、ちょっとした気候や気温の変化が、体調不良につながる。


普段から爪の色はよくないが、冬はとくにチアノーゼが顕著になる。


用心に用心を重ね、更に用心してもし足りることはない。

鞄の中に、コートの内ポケットに、ジャケットにも、薬と使い捨てカイロを忍ばせ外出する。


出掛けに、下宿先の師匠(ユリウス)の奥さん(マルグリット)が毎回、額に手を当てる。


熱がないか否かを確かめ、「気をつけて」と一声かけ、詩月を送り出す。


心配性の彼女は、詩月の1日のスケジュールを把握している。
日に数回、詩月のスマホにメールを送ってくる。

詩月の両親とも懇意にしている師匠夫婦。
詩月の情報は逐一、詩月の両親に報告されていることを、詩月は承知している。


週に1度の病院通い、主治医の診察は必須。
正直、手放しで安心できる状態ではない。



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