君と奏でるノクターン

4話/傷つくことを恐れて

サロンの明るい照明。
詩月は眩しさに、一瞬目を瞑る。


マルグリットは詩月をエスコートし、店内が一望に見渡せる席に着かせる。


「メニューを見ていてね」と席を離れ、店内の客に挨拶をしながらカウンター席へ向かう。


カウンターの奥。
スーツ姿の男性と数分、話をし席に戻ってくると、「ここはシュトルーデルがお薦め」と、メニューのページを開く。


「生地でリンゴを包み焼いてるの。紅茶に合うのよ」


「任せるよ……たぶん、半分も食べきれないから」


「女の子でもペロリ食べちゃうのに」

マルグリットは目を丸くする。


手袋を脱いだ手。
詩月は冷たくなり悴んだ手を、なるべく爪が見えないように暖める。


「寒い?」


「少し……演奏するなら手を暖めなきゃ」


「真面目ね」


マルグリットは、ピアノ演奏を聴きながら笑う。


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