君と奏でるノクターン
ピアノとヴァイオリンが見事に調和し、グノー・バッハの「アヴェ・マリア」を奏でる。

バッハの平均律を伴奏にしたグノーの「アヴェ・マリア」は示し合わせたわけではないのに、まるで初めから一つの曲のように合致している。

1859年にグノーがバッハの平均律集第1巻「前奏曲 第1番ハ長調」をプレリュードを伴奏に、ラテン語の聖句「アヴェ・マリア」を歌詞に用いて完成させた声楽曲だ。

しっとりとした旋律、優しく和やかな美しい調べがサロンを包む。ピアノを弾いている男性が、客席から奏でられるヴァイオリンの主を見つめる。

男性はヴァイオリンを弾く詩月が自分よりも遥かに優れた弾き手だと感じながら、ピアノを奏でる。

動揺し乱れる音に、ヴァイオリンの音色は全くぶれず、ピタリとピアノの音色に寄り添い支えている。

──凄い、なんて弾きやすい演奏だ。心地好い

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