君と奏でるノクターン
言いながら、詩月はゆっくりと立ち上がる。


「ピアノ……ベヒシュタインは、日を改めて弾かせてもらうよ」


「わかった……その、連絡先、メアドいいか?」


ミヒャエルは遠慮がちに、スマホを開く。


「貸して……赤外線送信」

詩月は手馴れた手つきで、素早くスマホを操作する。


「ちゃんと返信しろよ」


「ああ、着信音を設定しておく」


詩月はミヒャエルに、スマホを返し、穏やかに微笑む。


「なあ、何で着信音設定してる奴の電話に出ないんだ?メールの返信もちゃんとしてないだろう?」


「……着信音の歌詞にあっただろう?優しさが時には、ナイフになるんだ……だから」


「日本語はわからない」


「知る必要はないよ」


詩月は囁くように呟き、フッと小さく溜め息をつく。

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