君と奏でるノクターン
詩月は、平日も休日も関係なく、課せられたノルマのように演奏している。

ユリウスのレッスンがある日は、レッスン時間の1時間以上前から調弦をし、楽譜をお復習しレッスンに備え、指を暖める。

レッスン終了後もユリウスの指摘を踏まえ、時間など忘れたように納得のいくまで弾いている。

演奏が聴こえなくなり、マルグリットが部屋を覗きにいくと、ぐったり床に座り込んでいたり、ピアノに突っ伏していたりする。

エィリッヒによるピアノレッスンは、週に3日。

レッスン終了後に、カフェ「アマデウス」に寄り、ベヒシュタインを弾くこともある。

音楽のことしか頭にないのかと、思うくらいだ。



――練習の鬼だわ


マルグリットは呟いて、詩月を初めてサロンへ誘った時の、詩月のピアノを思い出す。


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