君と奏でるノクターン

2話/アヴェ·マリア

TO:ミヒャエル

RE:ベヒシュタイン

本文:講義が14時半に終わるから、アマデウスで演奏どう?

――――――

ミヒャエルは、絵文字も顔文字も何もない、用件だけのメールを昼過ぎに受信した。


メールの画面を見つめ、ストレートだなと呟く。


数日前の詩月を思い出し、「体調はいいのか?」と返信する。


詩月からの返信は、何分経ってもなく、14時半過ぎても返ってこない。


ミヒャエルは詩月からの返信を諦め、アマデウスに向かう。


時刻は15時前。

アマデウスの扉を開けると、珈琲の芳醇でほろ苦い香りが鼻をくすぐる。


ミヒャエルは、ピアノに目を向ける。

ピアノ科の学生がピアノを弾いている。


「まだ来てないのか……」と呟きながら、ミヒャエルは店内を見回す。


澱とカウンター横に構えたピアノの向かい側の席。

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