君と奏でるノクターン
詩月は腕の中の温もりに訊ねてみるが、目を丸くしたまま、じっと詩月を見つめている。


――ユリウス先生の猫だよな


「君がせっかく温めた蒲団だ。朝まで共にしようか」

詩月は喉を鳴らし、自分をみつめている猫を、蒲団に下ろし背を撫でる。


――大人しい猫だな

詩月は思いつつ蒲団を整え、猫と共にくるまる。


ベージュ色の短い毛並みをした猫は、手足が靴下を履いたような濃い茶色、尻尾は真っ直ぐで細い。


目を閉じ、低く微かに鳴らす喉の音が、何かの楽器のようだと詩月は思う。


そっと眉間を指で撫でる。

手の中にある温もり、その小ささに癒されていることが、不思議に思える。

部屋を間違い迷いこんできた子猫は、我関せずと寝息を立てる。

疲れと眠気で脱力し、詩月の瞼は重くなる。

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