君と奏でるノクターン
「体調はどうかと聞いているんだ」

ユリウスが苛立った険しい顔で言う。


「あ……大丈夫です。ゆっくり休めましたから」


「ユリウス、詩月の大丈夫はあてにならないわ。額に手を当てて熱を確かめないと」


「大丈夫ですって」


詩月はユリウスが、額に手を伸ばしたのを上手く交わして避け、子猫の頭を撫でる。

険しいユリウスの視線を感じ、「本当に大丈夫ですから」言いながら、すりよるように手を伸ばしてきた子猫を抱く。


詩月の腕に収まり、心地好さそうに、喉を鳴らす子猫。


「すっかりなついてしまったわね」

マルグリットはユリウスの不機嫌な顔を見上げ、わざとみたいに笑って言う。


「詩月、ホテルへは送っていくわ。サロンの途中だから」


「ありがとう」

詩月の顔からは、昨日までの悲痛な様子は感じられない。


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