君と奏でるノクターン
横浜――。

「郁、例の楽譜はマスターした?」


「ん……完璧にはまだ遠いけれど」


「あんな難しい楽譜が課題なんて、周桜らしいよな」

郁子は深い溜め息をつく。


「今日はバイトだよな。もしかしてクリスマスも?」


「うん。でも、その方が好都合。周桜くんが、クリスマスに曲を聴きたいって」


「当日、メールしてくるのか?」

安坂は口笛混じり訊ね、悪戯っぽく口角をあげて見せる。


「うん、時間はまだ決まっていないけど」


「電話越しのアンサンブルなんて粋だな」


「……それより、周桜くんと弾くなんて力の差が露になるから、すごく不安」


「まあ、あいつは凄い勢いで上手くなっていくからな」


「ええ、うめサクラって言う有名な占い師が『底が見えない』って言ったらしいし」


「当たるって評判のか?」


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