君と奏でるノクターン
「……周桜」

貢の言葉が続かない。

マスターがカウンターの中で「さすが周桜くんだね」と感嘆する。


「こんな情熱的な弾き方をする奴だったか?」

スマホから聞こえるヴァイオリンの音色に学生達が各々、言葉を漏らす。


「まるで、正門像の女神が裏門像の竪琴奏者を思って弾いてるようね」


「この曲。実は管弦楽バージョンとヴァイオリン独奏バージョン、二重奏バージョンを入れたCDが近々発売されるらしい」


「へぇ~」


「しかも、管弦楽バージョンは、うちの大学の学内オケで、二重奏はコンマスの安坂と留学中の周桜。だよな、安坂?」


「ああ。元々、周桜が書いた楽譜だからな。因みに独奏バージョンは周桜だ」


「凄い。ヴァイオリン奏者としてNフィルで名前も売れてるし、ヴァイオリンだけでやっていけるだろう」

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