君と奏でるノクターン
「それなのに、ピアニスト志望で、ウィーン留学してるってところが、周桜さんらしいわよね」


「留学した理由もエリザベート国際コンクールで、ヴァイオリン部門とピアノ部門に入賞するためだって話だし」


「ヴァイオリン部門に関しては、師匠が本選ファイナル落ちした仇討ちだとか」


「うわーーっ、そんな奴か? クールそうに見えたけどな」


「この演奏を聴いてクールだとは思わないわね」


貢は詩月の演奏に焦りを感じた気持ちが、学生達の会話で、何とか平常心に戻る。


郁子はスマホから流れる詩月の演奏に、大きな溜め息をつく。


「このヴァイオリン演奏に合わせてピアノを弾くの!?」

雄叫びのように悲痛な声を上げる。


――ここまで上がってこい。追いついてみろ


郁子は詩月から、言われているような気がする。



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