君と奏でるノクターン
クリスマスまで、もう何日もない。


郁子は、後どれほど弾きこむことができるだろうか?と思う。

郁子には、自分で完璧に弾けたという演奏レベルが、果たして詩月の満足できるレベルに、どれほど近づけるかも予測できない。


詩月が留学して間もなく。
郁子は教授から、詩月の母親が学生時代にチャイコフスキー国際コンクールの本選ファイナルまで勝ち進んだほどのヴァイオリン奏者だったと聞かされた。


――周桜くんはサラブレッドだ。
ピアノもヴァイオリンも、天才の血を引いている


郁子は改めて思う。


――追いかけてこい。次に会うのは、エリザベート国際コンクールのピアノ部門ファイナルだ


郁子の頭の中で、詩月の言葉が幾度も繰り返される。


――叶わないと諦めていては何も叶わない。
「希望は希望からしか生まれない」僕は君から、そう教えられた

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