シンデレラの落とし物
「あ、ありがとう」

「いやいや、こちらこそありがとうだよ。美雪ちゃんが来なかったらオレ、どーなってたか。足は怪我ない?」

「大丈夫です」

ちゃんと気遣ってくれるところも優しくて、乙女心のポイント押さえてる。
顔は整っているでしょ、性格もいいでしょ。ダメなところはないの?
こんなんじゃモテるはずだよ。

こんな夢のような展開、もう2度とないんだろうな。美雪は胸をドキドキさせながらミュールに足を通した。

「少し時間あるかな?」

「え?」

「喉もかわいたし、お茶でもいこう」

笑いかける笑顔につられて美雪は頷いていた。

だって、有名人にお茶に誘われるなんて、一生のうちに何回あると思う?


ふたりは賑やかな駅前のカフェに入った。
混み合った店内は窓から入る光で明るく、木製のカウンターに丸椅子が並び、ふたりがけのテーブル席がメインの、どちらかというとこじんまりとした店内だった。お土産物として黒と青のパッケージに包まれたバッチチョコレートが並び、様々な種類のパン等が並ぶ店内には焼きたてのパンの香りがただよい、食欲を誘っている。
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