シンデレラの落とし物
その姿にも自然と視線が引寄せられ、見とれる美雪。
なんだろう、動作ひとつとっても素敵……。
心にするっと入ってくる落ち着く低い声も素敵……。

「美雪ちゃんは、ひとりでイタリアに?」

「えっ!? ええ、はい」

秋を見つめてうっとりしていた美雪は慌てて我に返る。

「女性ひとりで?」

不思議そうに片方の眉を持ち上げる秋。コーヒーを飲みながら美雪は頷いた。

「あー、その、大丈夫なの? さっきはオレが危なかったわけだけど、ヨーロッパってけっこう物騒じゃない。女性ひとりだと危なくない?」

「賑やかな大通りを外れなければ大丈夫。それに、夜は暗くなる前にホテルに入るから」

なるほど。と頷く秋を見てあらためて思う。
いまわたしと普通に話しているのはアイドル。動いて話をして、すぐそばで同じ空気を吸っている。
なんだかいまだに実感が湧かない。

これは本当に現実?

「海外旅行はひとりで行くことが多いの?」

「海外旅行は好きです。でも、ひとりは今回が初めてなんです。ここはハネムーンで来た思い出の地……」

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