シンデレラの落とし物
穏やかに微笑むあの人の面影が頭をよぎり、美雪の胸の奥が痛んだ。

「ってことは、ご主人は?」

さすがにそこまでは話せない。
美雪は胸の痛みをしまい込んで、心を閉ざした。

「秋くんは? ひとりできたの? 後からメンバーと合流だったり?」

「……ああ、ひとりだよ」

秋の問いかけに答えず切り返す美雪に、秋が答えるまでわずかに間があった。逃げるように話題を変えた美雪に違和感を感じたのだ。

「今回少しだけどまとめて休みが取れて。以前からイタリアは周りに勧められてたから、この機会にね」

「じゃあ秋くんもひとりなんだ」

「あ。ちょっと残念そう」

秋が美雪をからかう。美雪は考えをめぐらせ、Funkyのメンバーを思い浮かべた。

「詩音(しおん)くんに会いたかったなぁって」

「詩音、くん? 詩音?」

「そう、詩音くん。けっこう好きなの」

「へぇ……なんだ、オレのファンじゃないのかー」

はぁと肩を落とす秋がなんだか可愛くて。

「わたしそんなこといった?」
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