シンデレラの落とし物
「交渉したらツインなら用意できるって話だったからさ。うん、そんなに狭くもなさそうだ。この部屋で我慢しよう」

立ち止まったままの美雪の横を通りすぎ、中に入って部屋の広さを確認して回る秋の声が、洗面所のほうから響く。

秋くんと同じ部屋……?
ああ。なるほど。
ってことは、男性と同じ部屋ってことだ。
ん?

同じ部屋で一夜を過ごす……?

さすがにムリムリ! 美雪は首を振った。

「部屋を用意してもらっていうのもなんだけど、他にもホテルはあるんだから、何もここじゃなくてもよかったんじゃ……?」

「オレが予約してたホテルはここだから」

違うホテルなど考えられないと反論でもしてきそうな勢い。
秋くん、意外と頑固だ。
新たな一面をみせられて、美雪は内心苦笑い。

「わたしだけ別のホテル探してもいいし、秋くんさえよかったらそのあと待ち合わせるとか」

「オレのそばにいろよ」

ツインの部屋に抵抗を感じている美雪の態度が秋は気に入らず、苛立ちを隠さずに吐き捨てた。

「えっ……」

美雪の胸がどきりと跳ね上がった。
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