シンデレラの落とし物
うーん……いや。
でもまさか、有名人がこんなところにひとりでいる?

そっくりさん、かなぁ……。

気になりだしたら周りを見る余裕もなくなるくらい、美雪は前を行く男性を盗み見することに集中していた。

だって、もし本人だったら凄くない?
同じとき同じ場所に有名人がいたら誰だってテンション上がっちゃうでしょ!?

観光客の列が止まり、壮大な大理石の彫像の前で止まる。その人が彫像を見るために顔を上げた。左右に分けられた柔らかな黒い前髪が揺れ、そこにはっきりとした横顔が現れた。意思の強さが表れた太い眉は眉尻が上がっていて、その下のまつげは長く、視線を惹きつける黒く輝く瞳。目鼻立ちのはっきりした輪郭は、顎にいくほどシャープでどこを見ても完璧な顔立ち。長身の体にダークグレーのスーツがとても良く似合っていた。

やっぱりテレビでよく見る大野秋くんっぽいなぁ。

声かけてみる?
でも、どう声をかけたらいいんだろう……。

芸能人ですよね?
大野さん?
いつも見てます~!

なんか違う。

< 3 / 81 >

この作品をシェア

pagetop