シンデレラの落とし物
声をかけたとして、他人の空似でした。とかだったら、ただの恥ずかしい人になってしまうし。
相手が相手だけにここは重要だ。
大野秋らしき目の前の男性の背中を穴が開くほど見つめる美雪。足もとなんて全く見る余裕などなかった。
突然、前に出そうとした足が引っ張られる。
「!?」
履いていた片方のミュールが脱げてバランスを崩した。美雪はつんのめるように前方に突っ込んだ。
「あっ……!」
顔面から転ぶのを拒否した美雪の体に防衛本能が働く。伸ばした手で前を行く男性の背中を鷲掴んだ。
「うっ!」
いきなり後方から重力がかかってバランスを崩してのけ反る男性。すぐに体勢を整えると何事が起きたのかと迷惑そうに振り返った。しがみついたまま顔を上げた美雪は相手の顔を真っ正面から見て確信した。
「あの、大野秋くんですよね?」
問われた男性は、己のジャケットを掴む手、次いでその手の持ち主の美雪の顔を、そして視線を下げ、彼女の裸足になった足、その足から脱げて床に刺さるミュールを見てうんざりしたような表情を浮かべた。
「君の落とし物」
相手が相手だけにここは重要だ。
大野秋らしき目の前の男性の背中を穴が開くほど見つめる美雪。足もとなんて全く見る余裕などなかった。
突然、前に出そうとした足が引っ張られる。
「!?」
履いていた片方のミュールが脱げてバランスを崩した。美雪はつんのめるように前方に突っ込んだ。
「あっ……!」
顔面から転ぶのを拒否した美雪の体に防衛本能が働く。伸ばした手で前を行く男性の背中を鷲掴んだ。
「うっ!」
いきなり後方から重力がかかってバランスを崩してのけ反る男性。すぐに体勢を整えると何事が起きたのかと迷惑そうに振り返った。しがみついたまま顔を上げた美雪は相手の顔を真っ正面から見て確信した。
「あの、大野秋くんですよね?」
問われた男性は、己のジャケットを掴む手、次いでその手の持ち主の美雪の顔を、そして視線を下げ、彼女の裸足になった足、その足から脱げて床に刺さるミュールを見てうんざりしたような表情を浮かべた。
「君の落とし物」