シンデレラの落とし物
思い出がたくさん詰まったミュールだ。
最初は真っ白だったミュールも、地面に突き刺し、すっ飛ばし、転がしてあちこち剥げてしまったけれど、日本に帰ったら大事に閉まっておこう。
もう一度秋を見て、その真っ直ぐな瞳と、さよならの代わりに見つめあった。
搭乗口へ向かうエスカレーターに乗っても、後ろは振り返らなかった。
たくさんの思い出をもらった。
それで充分。
飛行機は離陸し、順調に空を飛んだ。
イタリアの大地が少しずつ遠くなっていく。
そして秋くんも。
座席に座った美雪はコーヒーを飲み、一息ついた。
不思議と心は穏やかだった。
窓に映る自分の表情。無意識に唇に指を滑らせる。
秋くんと交わしたキスの名残で、まだ少し唇が腫れているような感覚が残っていた。
もう会えなくなる。
わかっているけれど、あのキスのおかげで今は寂しくない。
今後もテレビや雑誌で秋くんを見るだろう。そしてもう手の届かない秋くんを想い、いつか辛くなるときが来るのかもしない。でも、いまはまだ余韻に浸っていたかった。
最初は真っ白だったミュールも、地面に突き刺し、すっ飛ばし、転がしてあちこち剥げてしまったけれど、日本に帰ったら大事に閉まっておこう。
もう一度秋を見て、その真っ直ぐな瞳と、さよならの代わりに見つめあった。
搭乗口へ向かうエスカレーターに乗っても、後ろは振り返らなかった。
たくさんの思い出をもらった。
それで充分。
飛行機は離陸し、順調に空を飛んだ。
イタリアの大地が少しずつ遠くなっていく。
そして秋くんも。
座席に座った美雪はコーヒーを飲み、一息ついた。
不思議と心は穏やかだった。
窓に映る自分の表情。無意識に唇に指を滑らせる。
秋くんと交わしたキスの名残で、まだ少し唇が腫れているような感覚が残っていた。
もう会えなくなる。
わかっているけれど、あのキスのおかげで今は寂しくない。
今後もテレビや雑誌で秋くんを見るだろう。そしてもう手の届かない秋くんを想い、いつか辛くなるときが来るのかもしない。でも、いまはまだ余韻に浸っていたかった。