シンデレラの落とし物
再び会えたことに乾杯した秋と美雪は、ジョッキをカチンと合わせて喉ごしのよいビールを流し込む。

「遅くなってごめん」

「ううん」

まともに顔を見れない美雪は少しうつむき加減のまま、謝る秋に大丈夫と首を振る。

「ジャケットの撮影が入ってたんだ」

「ジャケット?」

秋くんがそばにいることが嬉しくて、でも何故か逃げ出したいような気持ちもどこかにあって。これって久しぶりだから感じる感覚なの? なんだか落ち着かない気分。少し、緊張しているのかもしれない。

「2ヶ月後に出すシングルのジャケット撮影」

美雪の問いかけに、お通しの切り干し大根をつまみながら秋が答える。

「どんなジャケットなの?」

秋の顔が見れないまま、ジョッキの持ち手をもてあそぶ。

「………」

そんな美雪の仕草を目で追っていた秋は、つかの間の沈黙のあと、

「……クマのキグルミ着てケツ振って踊ってる」

「……え? ええっ!?」

秋の発言に驚いてようやく顔を上げた。

「やっと見たな」

「えっ?」

目をぱちくりさせる美雪に、ニッと笑いかける。

「ビールのジョッキばっかり相手にしてたろ」
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