シンデレラの落とし物
「あ……それは」

言い逃れが出来ずに美雪は、苦笑いを浮かべるしかなかった。

「じゃあ、クマのキグルミのくだりは?」

「冗談だよ。曲のイメージに合ったいいジャケットに仕上がってる」

「なんだ。あーもう、びっくりした」

美雪はホッと胸を撫で下ろす。
でも。秋くんがキグルミなんて、イメージ出来ないけれどそれはそれで可愛いかもしれない?でもそれでお尻振られても……。

「美雪ニヤニヤしてる。えっちだなぁ」

「やっ! ちがっキグルミ着た秋くんどんなかなって」

「オレで妄想してたの? やっぱり美雪はえっちだなぁ」

「もうっ!! そういってる秋くんのがニヤニヤしてるじゃんっ」

「マジ? それは失礼しました」

手を胸に当てて大袈裟に頭を下げる秋。再び顔を上げ目が合うとどちらからともなく笑顔が弾けた。ひととおり笑い合い、ふと真面目な表情へ戻った秋が、

「やっと会えた」

しんみりと呟いた。
美雪の心がじんわり、幸せな気持ちで満たされていく。

「秋くん忙しそうだけど、元気そうでよかった」

「確かにハードな毎日だった。イタリアでのことを思いだしながら頑張ってたよ」

「思い出?」

どきんと胸が飛び跳ねた。

「美雪……」

じっと見つめられて時が止まる。
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