それは薔薇の魔法
「あの、何か……?」
「国王夫婦がお呼びだ」
「国王夫婦が?」
呼び出しなんて珍しく、思わず目を丸くする。
わたし、何かしてしまったのかしら……?
そして頭の中で浮かぶのはシリル様のこと。
まさか、無礼な態度をとっていた自覚はあったけれど、そのこと?
そんな……
不安そうな顔をするわたしを見て、兵の人は大丈夫だというように笑った。
「そんな顔するなよ」
「でも……」
「多分、今日の夜のことで話があるんだと思うぜ?」
「夜?」
何かあるのかと首を傾げると、兵の人は笑いながら、今夜舞踏会が催されることを教えてくれた。
舞踏会……そういえば姫君たちとの交流の一環で、そんなことをするとシリル様も言っていたような。
国王夫婦がいらっしゃるという広間の扉に連れて行かれる。
コンコンとノックをして、中から扉が開く。
緊張で体が固くなりながらも、なんとか国王夫婦の前に来て頭を下げた。
「庭師ローズ、来ました」
あぁ、いつもそうだけれど緊張で声が震えてしまう。
いい加減に慣れたいのに、やはり慣れることは難しいらしい。
「久しいな、ローズ。
顔を上げよ」
言われるままに顔を上げれば、穏やかな微笑を浮かべた国王、アレン様とその妃、シェイリー様がいた。
「そんなに緊張せずともよい」
「はい……」
と言われても、こればっかりはわたしの自由になることではないので。
でもどうやら本当にシリル様のことではないようで、少しだけ肩の力が抜ける。
「今日はそなたに頼みたいことがあってな」
「頼み、ですか?」
そうだ、とアレン様が頷く。