それは薔薇の魔法
どんな頼みだろうと顔を強ばらせると、シェイリー様があなた、ローズが怖がってますわ、とアレン様を叩いていた。
叩くと言っても軽いものだけれど、わたしのためにしてくれたシェイリー様にも、わたしのせいで叩かれてしまったアレン様にも申し訳なさが募る。
「すまないすまない。脅かすつもりはなかったのだが…」
「い、いえ!それで頼みとは……?」
アレン様はにっこりと笑った。
兵が言っていた通り、それは夜の舞踏会のことだった。
なんでも普通の舞踏会じゃつまらないから、ちょっとかわったことをしたいとか。
この城で有名なのは薔薇園だから、その薔薇で何かできないことはないかとわたしを呼び出したらしい。
「それをそなたに考えてほしいのだ」
そなたはこの城で一番薔薇に詳しいであろう?と言われて曖昧に笑みを返す。
確かに詳しくはあるかもしれないけれど……
城で一番かと言われるといささか自信がない。
まぁそれは今置いておくとして。
「薔薇と、舞踏会……」
何かかわったこと……
と言われても、やっぱりいい案は思い浮かばない。
というよりも舞踏会のイメージが湧かないのですが。
「申し訳ありません。わたしにもこれといった案は……」
「そうか……」
しゅん、とあからさまに肩を落としたアレン様を見ていられなくてわたしも視線を下げる。
「ローズ、あなたは気にしなくてもいいのよ」
「シェイリー様……」
でも、と言葉を続けようとしたわたしに、シェイリー様は明るい笑顔を見せた。
「だいたい、今夜のことを今から考えて実行しようだなんて、無理な可能性の方が高かったのよ。
この人、また思いつきでこういうことしてるんだから気にしないで」
そう言われてもやっぱり申し訳ないことには変わらない。