それは薔薇の魔法
「そうね……薔薇園の中で一番広いところはどこかしら?」
「そうですね……」
基本大きい場所と小さい場所はあるけれど、大きい場所はあまり大差がない。
「クォーツの広場はどうでしょうか」
クォーツの広場には、主にピンクや白、淡いオレンジの薔薇が咲いている。
場所も広いし、噴水もあって暗い夜に光を当てれば綺麗なのではないだろうか。
そう言うと、シェイリー様もそうしましょうと微笑んだ。
「そうとなったらお菓子も作らなければね。
そのお菓子はローズにしか作れないの?」
「いえ、わたしが作れるのは簡単なものですし……
それは料理長に任せた方がよいかと」
「分かったわ」
お茶会の方針が決まるとてきぱきと周りに指示を出していくシェイリー様に、わたしはただ茫然としていた。
これは、わたしはどうすれば……
「ローズ」
「あ、アレン様……」
国王であるアレン様も、シェイリー様を見て少し苦笑している。
「シェイリー様……
あんなに張りきるほど、シリル様の妻になる人を自分で見極めたいのでしょうか」
「いや、」
否定の言葉を口にしたアレン様に、わたしは目を向ける。
ローズには話しても大丈夫だろう、とアレン様は少し困ったように笑う。
「実は、妻もシリルもこの縁談にはあまり乗り気ではないようでね……」
「シェイリー様も?」
前々からシリル様に関しては聞いていたけれど、シェイリー様もだったなんて……
でも、それならどうしてあんなに張りきっているのだろう、という疑問が浮かぶのは当たり前だと思う。
「ただローズの言っていた薔薇のお菓子が食べたいだけだと思うぞ?」
「そうでしょうか…」
嘘ではない、とは言えないけれど。