それは薔薇の魔法
「妻やシリルの気持ちも分かるのだが、私としてはシリルに早く王位をついでほしい。
そのためには早く伴侶を見つけてほしいのだが……」
どうやら今のところ、気に入る姫君はいないらしい、とアレン様は苦笑する。
シェイリー様のお目にかかる人もいないとか。
成人の日も近いのに、どうするのかしら。
「……でも、この城に招かれたのは身分もしっかりした姫君たちなのでしょう?
きっと大丈夫ですわ」
そう言うと、アレン様は少し微笑んだ。
「そなたは、よい子に育ったな」
「それもアレン様やシェイリー様のおかげです」
ここにいてもわたしのやることはなさそうなので、一足先にわたしはクォーツの広場に向かった。
せっかくのお茶会。
自分にできることは精一杯しておきたい。
そんなわたしの後ろ姿を、アレン様とシェイリー様が優しく見ていたことに、わたしは気づかなかった。
時間は過ぎ、着々とお茶会の準備がされていく。
わたしも一つ一つ薔薇を見て周って最終確認をしていた。
「今日はよろしくね」
そう声をかけて回る。
うん、これで大丈夫だわ。
きっとこの夜の間、薔薇たちは美しい姿を見せてくれるはず。
シリル様も、美しいと思ってくれるだろうか……
自然に綻ぶ口元を隠して、わたしはアレン様とシェイリー様のもとへ向かった。
二人は噴水のところで話しているようだ。
二人で話しているところに入るのは、少し忍びない気もするけれど、わたしのような者がずっとここにいるわけにもいかない。
「あの、シェイリー様……」
「ローズ。準備は終わったの?」
「はい。薔薇たちは大丈夫です。
きっと今夜も綺麗に咲いてくれますよ」
そう、と微笑むシェイリー様にわたしも笑顔を浮かべる。