それは薔薇の魔法
って、このまま和んでいてはいけないわ。
「あの、それで、準備も終わったことですし、わたしは戻ってもいいでしょうか?」
「そのことなんだけどね」
「?」
何かあるのかと首を傾げるわたしに、シェイリー様は眉を下げる。
「もしものときのために、あなたにはいてほしいのよ」
「えっ」
それはつまり、わたしもお茶会に参加しろということ……?
そんな、畏れ多いこと……!!
顔を青くするわたしにシェイリー様が慌てたように言った。
「違うわ。お茶会に参加しろということではなく、この近くで待機していてくれないかしら?」
「待機……?」
「そう。この近くにはちょっとしたお茶会のための場所があるでしょう?」
そう言われて思い出すのは、三日前にシリル様と初めて出会った場所。
あそこ、かしら……?
「あそこならすぐに呼びに行けるし、お願いできない?」
そういうことなら……朝には響くかもしれないが、そこまで影響もしないだろう。
「分かりました」
「よかった、ありがとう」
「いえ、わたしにはこんなことしか出来ませんから」
それに、実際の舞踏会……お茶会だけれど、それにも興味がある。
ちょっと覗くぐらいなら許されるだろう。
「では、わたしは向こうにいますね」
「あ、待って。せめて護衛をつけるわ」
「大丈夫です」
わたしの身を案じてくれてのことだとは分かるが、知らない誰かといるよりも、一人の方が気楽でよかった。
お茶会が始まるまで、まだ時間があるだろうと、一度自室に戻り、適当に本を何冊か持つ。
灯りのための燭台も持って部屋を出た。
夜は薔薇がライトアップされるから、灯りに問題はないと思うが……
うん、一応の念のため。