それは薔薇の魔法




シェイリー様が近くまで来たので、わたしは席を譲ろうと立ち上がる。



「ローズ」



はい、と返事をする前にふわりと手を包まれた。



「シェイリー様……?」


「さっきの言葉に、嘘はないわよ。あなたが来てから、私はあなたを娘のように思っているわ」



優しい顔で微笑まれて、わたしも自然に笑顔がうつる。



「ありがとうございます、シェイリー様」



じんわりとシェイリー様の言葉が心に響く。



「母上、少しいいですか」


「何よ。せっかくのいいところを邪魔しないで頂戴」


「シェ、シェイリー様」



邪魔って……シリル様は実の子供なのに……


慌てるわたしに比べて、シェイリー様もシリル様も平然としている。



「彼女…ローズと言っていましたが、彼女はこの城に来て何年になるのですか?」


「そうね……九年かしら。もうすぐ十年になるわね」



十年?と呟きわたしを見る。


わたしもそれを肯定するように控えめに頷いた。



「そんなに長い間いて、今まで会ったことがなかったのか……」


「人前に出さないようにするのは当たり前でしょう。
ローズはかわいいから、何かあっては大変だわ」



何かあるだなんて……シェイリー様の目には、そんなにわたしは頼りなく映っているのかしら。


確かに子供の頃は不慣れなことが多くて大変ではあったけれど。


わたしももうすぐ十七歳になる。


そんなに心配しなくても大丈夫なのに……



「そうですね……」



シリル様まで……


やっぱり、頼りなく見えるのだわ。


わたしはそっと息を吐いた。






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