それは薔薇の魔法
愛しい思い出
あのあと、シェイリー様と少し話をしてから部屋に戻った。
最後までいなくても大丈夫なのかと聞いたけれど、あと少しだからとシェイリー様に戻りなさいと言われてしまった。
そう言われてしまえば、わたしにできるのはその言葉に従うことだけ。
わたしは素直に部屋へ向かった。
その途中、少しだけお茶会の開かれているクォーツ広場に足を向けて。
色とりどりの薔薇が咲く中、着飾った姫君たちが楽しそうに話をしている。
選らばれた人らしく、どの姫君もとても美しかった。
そしてその中で談笑しながら歩いているその人。
こういう表現はどうかと思うけれど、シリル様は特に美しかった。
そう、姫君たちに負けないぐらい美しく輝いていた。
やっぱり、わたしとは住む世界が違うんだと改めて思って。
なぜか少しだけ、胸がギシリと軋んだ。
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「どうして、あんな感じがしたのかしら」
昨夜の、胸の軋みが気になる。
病気、なわけないわよね。
今はなんともないわけだし。
それに一瞬だったし……気のせいかしら。
うん、それが一番しっくりする気がするわ。
一人で頷いて納得する。
今わたしがいるのはこの城の中にある薔薇園の一つ。
クォーツ広場ほどの大きさがあるマカライト広場。
ここは場所ごとに違う色の薔薇が咲いている。
中央には赤、それを丸く囲むように道を隔ててピンク、オレンジ、黄色などが咲いている。
遠くから見ると、虹のようでとても美しいと、多くの人に人気がある薔薇園だ。
わたしはピンクの薔薇の前にしゃがみこんでいたが立ち上がった。
さすがに、長い時間あの体勢でいるのは少し疲れたわ……
ぐっと背中を伸ばして息を吐く。