それは薔薇の魔法
な、何?
何が起こって……?
まっすぐに見つめてくる紫の瞳に、わたしの心臓が少し騒ぐ。
「あ、あの……」
緊張で少し震える声を発すれば、シリル様はふっと綺麗な笑みを見せた。
「貴方の瞳は、綺麗だな」
「…………はい?」
何を言われたのか一瞬理解できず、ぽかんとシリル様を見つめる。
え、と……今、わたし、褒められた……のかしら?
「初めて会ったときから、珍しい色だと思っていたんだ」
そう言ってどこか愛しそうに瞳を柔らかくさせる。
「そ、うなんですか……」
褒められ慣れていないからか、ドキドキと少し胸が音をたてる。
なんとか言葉を返すと、にっこりと目の前で笑う顔が。
その無邪気な感じや、まだ添えられている手に、なんだか恥ずかしいような気がして。
「は、母の遺伝なんです、わたしのこの瞳の色は……」
わたしの瞳の色は、確かに滅多にいないだろうローズピンクの瞳。
わたしも母以外では見たことがないと思う。
「ローズのお母さん?」
「はい。もともと母はこの国の人じゃなかったらしいので、だから、珍しく感じるのだと思います」
あぁ……恥ずかしさをまぎらわすためとはいえ、早口でヘンなことを……
何もわざわざ自分の身内の話なんて言わなくてもいいのに。
もともとあった申し訳なさが更に加速していく。
「もっと、聞かせてくれないか」
「え?」
下げていた視線を上げれば、そこには笑っているシリル様が。
「貴方の話を、もっと聞きたい」
「え、でも……」
聞いたって、何も面白いこともないのにどうして……
困惑するわたしに、シリル様はゆっくりと言った。
「ローズのことを、知りたいんだ」
「……!!」
特別な意味なんて、ないことは分かっている。
けれど、こんなに素敵な人にそんなことを言われたら……
わたしは微かに頬の熱を感じながら頷いた。