それは薔薇の魔法
この時間帯の薔薇園は、朝露が光に反射してキラキラと輝き、まるで宝石のような美しさを放っている。
ここの庭は広く、いろいろな場所で薔薇が咲いている。
赤やピンク、白はもちろんのこと、青や紫など珍しい色の薔薇が咲き乱れている。
また、場所によって色が違い、薔薇の生け垣で作った迷路もある。
他の花も咲いてはいるが、やっぱり城内でも薔薇園に人気があり。
精一杯お世話をした花が美しいと褒められるのはとても嬉しく、やりがいを感じる。
「おはよう、今日もいい天気ね」
毎日するように声をかければ、薔薇も返事をするようにその葉を震わせた。
サワサワとした音が心地よい。
返事をしてくれるなんてわたしの気のせいだと言われればその通りだけれど、やっぱり薔薇たちが話かけてくれているのだと信じたい。
一通りぐるっと見回り、ここは大丈夫そうだとわたしは次の場所へと向かう。
庭は広いから大変なのよね……
でも大好きな薔薇に囲まれていられるなんて。
辛いと感じたことは一度だってなかった。
少し歩けば視界に目的地である薔薇が見えてきた。
ここには濃淡の違いのある紫の薔薇と、小さめの黄色い薔薇が植えてある。
真ん中にちょっとしたお茶会を楽しめるようなベンチとテーブルがあり、その周りをぐるぐると二重ほど薔薇の生け垣が囲んでいる。
よくここにくる子供たちが、この薔薇垣の間に入って怒られている姿を見るな、と思わずくすりと笑みがこぼれた。
近くまで来てみると、紫の薔薇が少し元気がないように見える。
うん……これぐらいなら数分で大丈夫かしら。
その前に他の薔薇もどうなのか見ないと。
ぐるりと一周回れば、ところどころにしょんぼりとした薔薇があって。
これは、一つ一つよりも全体に対してやった方がいいわね。