それは薔薇の魔法
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わたしの父と母はここからどこか遠くの国であったらしい。
父は気ままな旅人、母はそれなりに裕福な貴族の娘。
そんな二人の出会いはどこか大きなパーティーの席で。
父は珍しい力、もとい魔法を扱えた。
それが"癒しの力"、"生命の力"
その恩恵に与れば生き物は癒され、傷を治すことができる。
女性であれば、その美貌を保つことも。
そして、その寿命ですら伸ばすことができる。
……ただし、これは過度に使うと使い手の命が削られるかもしれないような危険な魔法。
あくまで使い過ぎると、なだけで普段使うには問題はないらしいけれど。
ある日、そこのパーティーに余興を見せるための旅芸人として父が呼ばれ、母と出会った。
一瞬にして恋に落ちた二人だったけれど、恋仲になるのを母の親類が許すはずもなく。
一生懸命説得を繰り返すけれど、父は母と会うことも許されなかった。
それでも諦めきれなかった父は、母の屋敷に行きその場でプロポーズ。
自分と一緒に生きてほしい。
君が望むなら、自分は君を世界で一番幸せにするから。
金も地位も、全てを捨ててついてきてほしい。
そのかわり、君への愛を捧げるから。
母はそんな父の手をとり二人で逃亡。
二人で旅をしながらいろいろな国を回っていたらしい。
そして、わたしが生まれた。