それは薔薇の魔法
わたしが生まれてすぐはどこかの国で一旦落ち着いて生活していたらしい。
けれど、わたしが物心つく頃には一緒に旅をしていた。
それなりに大変なことはたくさんあった。
そのたび父が頭を撫でてくれたり、母が歌ってくれたり。
父の力がわたしに受け継がれていて、わたしが初めて植物を種から咲かせたときは、父も母もすごく褒めてくれた。
同時に、むやみに使ってはいけないよ、とこの力の危険性も諭された。
とても楽しくて、幸せな日々だった。
わたしがこの国に来たのは七歳の頃。
父は一人旅をしていたときに、一度この国に訪れたことがあったらしく。
ちょうど薔薇の時期だから見てほしい、とお城に招待された。
もちろん、母とわたしも。
初めてのお城にドキドキして、わたしは母に叱られて、父は苦笑していた。
国の王様と話をしている父を、なんだか眩しそうに見ていたのを覚えている。
王様と王妃様が、とても優しくしてくれたことも。
お城からの帰りだった。
本当に突然で、わたしはただ茫然として動くこともできなかった。
気づいたときには父も母も木材の下敷きになっていて、、その周りには毒々しい赤が広がっていた。
事故だった。
木材を上げているときにそれを支えているロープが切れて、その下をわたしたちが通っただけ。
いち速く気づいた父は、そばにいたわたしを突飛ばし、母を庇うように倒れていた。
けれど、父も母も当たりどころが悪かったのか、即死だった。
一気に家族を無くし、頼るあてもないわたしを引き取ってくれたのが国王夫婦。
アレン様とシェイリー様だった。