それは薔薇の魔法




「薔薇というと赤のイメージがあるが、どうもその人に赤は似合わないような気がしてね。

かと言ってどれがいいのかが分からず、ローズに何かアドバイスを貰おうと、ね」


「そう、ですね……」



少し考えてみるけれど、わたしはその方のことを知らないわけで。


その方に似合うイメージと言われても……当たり前だけれど浮かばない。



「シリル様は、どうして花束を送ろうと思ったのですか?」



やっぱり恋人に送るものだもの。


お誕生日や何かの祝い事……それともプロポーズか何かで渡そうとしているのかしら。


プロポーズだとしたら赤い薔薇が定番だけれど、赤は似合わないのよね。


どうしようかしら、と考えてわたしは首を傾げる。


シリル様はそういえば言ってなかったね、と穏やかに笑った。



「今度、その人が結婚式を挙げる予定でね。
そこでプレゼントとして送ろうと思ったんだよ」



そうなんですか、と答えようとして少し違和感を覚える。


シリル様、随分となんと言うか他人事のように話しているけれど……ご自分の事ではないのかしら?


そんな疑問を浮かべるわたしに気づかず、シリル様は嬉しそうに話を続ける。



「昔から本当の兄妹のように私を慕ってくれた子で、幼い頃から私の後ろを『お兄さま』と呼びながらついてきていたよ。

よく、実の兄妹より私の方が兄に見られていたな」



くすり、とそのときのことを思い出しているのか、シリル様は楽しそうに笑う。


そんなシリル様に対して、わたしの頭の中は少しだけ混乱していた。



えぇと……もしかして、わたし、勘違いをしていたのかしら。


てっきり、恋人に送るものだと思っていたのだけれど。


シリル様が言うには、その方はシリル様にとっては妹のような方で。


そのうえその方は結婚式を挙げる予定らしく。



つまり……






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