それは薔薇の魔法




「この花束は結婚祝いに送ろうと……?」



おずおずとそう聞けば、シリル様は笑顔でそうだと言った。



……わたし、一人で勝手にあれこれ想像してしまったわ。


勝手に勘違いしてしまって……


恥ずかしすぎて顔が熱くなる。



「ローズ、顔が赤くないかい?」


「だ、大丈夫です。気にしないで下さい……」



熱くなった顔をシリル様から背けるようにして、わたしは薔薇の方へ目を向ける。


こんな顔、シリル様に見せられないわ……


もうすでに少し見られてしまったけれど。



「やっぱり薔薇と言ったら赤がいいのだろうか……」



聞こえてきた真剣な声に視線を戻せば、シリル様が少し眉を寄せて悩んでいる。


真面目に考えていることは分かるけれど、少し笑みがこぼれる。



「……もし、シリル様が赤薔薇を送ったら、その場で新郎の方に怒られてしまうかもしれませんね」


「どういうことだい?」



わたしの言葉にシリル様は不思議そうに首を傾げる。



「さっき、シリル様はその方には赤は似合わないと言っていましたが、それは場の雰囲気のこともあったのではないですか?」



そう聞くと、シリル様は少し頷いた。



「そういえば……そう思っていたかもしれないな」


「ふふっ……赤薔薇は、だいたい告白のときやプロポーズで使われていますから」


「なるほど」



納得したような顔をして、次に少し微かな疑問を感じるかのように表情が移る。


少し時間があいてから、シリル様はわたしに目を向けた。


わたしもきょとん、としたままシリル様を見つめ返す。



「ふと疑問に思ったのだが、ではなぜ告白では赤薔薇が定番なのだろう」


「え……」



もしかして、シリル様は知らないのかしら。







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