それは薔薇の魔法




それは、まぁ、わたしもそこまで多くを知っているわけでもないけれど。



「シリル様は、花言葉を知っていますか?」


「花言葉?あぁ…確か一つ一つの花に意味を込めたとかいう……?」


「はい」



わたしはそっと目の前にあった赤薔薇に目を移す。


鮮やかで、艶やかでさえある赤薔薇。



「赤薔薇の花言葉はたくさんありますが"情熱"や"愛情"、"貞節"、"あなたを愛します"など、恋愛に関することが多いんです」



その見た目通り、まるで炎のように熱く、激しいような……



「だから告白やプロポーズで送られるというわけか」


「全てがその理由だとは言えませんが……」



でも何かしらの関連があるのではとわたしは思っている。



……そうだわ。


その方に似合うような薔薇は分からなくても、花言葉で選ぶのも一つの方法ではないかしら。


どうして思いつかなかったのだろう。



くるりと反対を向いて、わたしはある薔薇のところへ向かう。


何かを感じたのか、シリル様はわたしのあとを歩いてきた。



「青い、薔薇……?」


「はい」



わたしが来たのは青薔薇が咲いている場所。



「花束は、青薔薇で作ってはどうでしょうか?」


「青薔薇か……何か理由があるのかい?」


「はい」



わたしは笑顔のままシリル様に向き合う。



「最初は、花嫁のイメージから白薔薇がいいかとも思ったのですが……

シリル様は青薔薇の花言葉が分かりますか?」


「そうだね。白薔薇だとイメージはつくけれど、青か……」



分からないな、と少しして降参とでもいうように肩を竦める。


わたしはそんなシリル様に笑みをこぼしながら口を開いた。






< 37 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop