それは薔薇の魔法
それは、まぁ、わたしもそこまで多くを知っているわけでもないけれど。
「シリル様は、花言葉を知っていますか?」
「花言葉?あぁ…確か一つ一つの花に意味を込めたとかいう……?」
「はい」
わたしはそっと目の前にあった赤薔薇に目を移す。
鮮やかで、艶やかでさえある赤薔薇。
「赤薔薇の花言葉はたくさんありますが"情熱"や"愛情"、"貞節"、"あなたを愛します"など、恋愛に関することが多いんです」
その見た目通り、まるで炎のように熱く、激しいような……
「だから告白やプロポーズで送られるというわけか」
「全てがその理由だとは言えませんが……」
でも何かしらの関連があるのではとわたしは思っている。
……そうだわ。
その方に似合うような薔薇は分からなくても、花言葉で選ぶのも一つの方法ではないかしら。
どうして思いつかなかったのだろう。
くるりと反対を向いて、わたしはある薔薇のところへ向かう。
何かを感じたのか、シリル様はわたしのあとを歩いてきた。
「青い、薔薇……?」
「はい」
わたしが来たのは青薔薇が咲いている場所。
「花束は、青薔薇で作ってはどうでしょうか?」
「青薔薇か……何か理由があるのかい?」
「はい」
わたしは笑顔のままシリル様に向き合う。
「最初は、花嫁のイメージから白薔薇がいいかとも思ったのですが……
シリル様は青薔薇の花言葉が分かりますか?」
「そうだね。白薔薇だとイメージはつくけれど、青か……」
分からないな、と少しして降参とでもいうように肩を竦める。
わたしはそんなシリル様に笑みをこぼしながら口を開いた。