それは薔薇の魔法
危ない窮地



それから数日後。


庭で薔薇の様子を見ていると名前を呼ばれ、振り向くと美しく笑顔を浮かべているシリル様がいた。



「ちょうどよかった。ローズに会いたかったんだ」


「どうかしたのですか?」



何かしてしまったのだろうか、と不安になるわたしに、シリル様は笑顔で首を振る。



「この前の、花束のことでね。ローズのアドバイスで青薔薇を贈ったんだ。
それを彼女も喜んでくれた報告を貴方にしたくて」


「そうだったんですか」



よかった……


わたしのアドバイスがシリル様のお役にたったのね。


喜んでくれた人もいて……


心が温かくて、すごく嬉しい。



「まぁ、自分で選んでいないことはバレてしまったんだけど……」



でも、こんなに素敵な贈り物をしてくれた人に会いたいと言っていたよ、と言われ、わたしはまじまじとシリル様を見てしまった。


それが面白かったのか、シリル様は楽しそうに声を上げて笑い。


わたしは恥ずかしくて思わず俯いてしまった。



「シリル様」



不意に、シリル様の後ろから聞こえた声。


見ると、シリル様の結婚相手の候補としてこの城に滞在しているリリアス様がいた。


わたしとは違う真っ直ぐで艶やかな黒髪。


同じく真っ黒の瞳は意志の強い光を放っている。


健康的な肌色に女性らしい体つき。


同性であるわたしまで見惚れてしまうような美しさ。


わたしは慌てて一歩下がり頭を下げた。



どうしましょう……こんなところを見られてしまうなんて。


これがアレン様やシェイリー様に知られたら。


わたしだけでなくシリル様までお咎めを受けてしまったら……


申し訳なくて顔があげられない。







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