それは薔薇の魔法
「リリアス姫、どうなさったのですか?」
穏やかな、シリル様の声が響く。
「いえ、ただ天気が良いのでシリル様をお散歩に誘いに来たんですの」
「あぁ、確かにいい天気ですね」
そのまましばらく二人は会話をする。
どうやら二人は薔薇園に行くみたい……
そういえば、リリアス様は他の姫君たちよりもシリル様に近いとか。
将来のシリル様の伴侶はリリアス様だと言われていたような……
そう考えてズキリ、と痛む胸。
まただわ……いったいなんなのかしら。
この、形容し難い胸の痛み……
「では、ローズ、また話そう」
「は、はい」
シリル様とリリアス様の背中を見送り、わたしも二人とは逆の方へ歩きだす。
そのとき、鋭い視線を感じて振り向くとリリアス様がこちらを見ていて。
思わず、ビクリ、と体が震えた。
なんだったのかしら、今の瞳……
すごく敵視されているような、冷たい瞳だった。
わたし、リリアス様に対して何かしてしまったのかしら?
でも今日初めて会ったのだけれど。
考えても思い当たることがなく、わたしは気のせいだと言い聞かせて仕事へ戻った。
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「ローズ、手があいてたらこっち手伝ってよ」
「あ、はいっ」
知り合いの侍女に呼ばれてそちらに向かう。
こんなに忙しいのは明日の夜、アレン様とシェイリー様の結婚記念日を祝う舞踏会が開かれるから。
シリル様のこともあるのに、お二人とも大丈夫かしら?