それは薔薇の魔法




覚悟を決めて顔を上げる。


そして庭にあった全ての薔薇が切り落とされていたことを報告した。


次第に暗い顔になるアレン様とシェイリー様に、背中に冷たい汗が流れる。



「それは、困ったな……」



明日は舞踏会があるのに、と呟くアレン様にドキ、と心臓が跳ねる。



「まさか、中止するわけにもいかん。仕方がないが、他の花を植えるなどして誤魔化すしか……」


「ま、待って下さい!」



慌てて言ったから大きな声になってしまい、口を塞ぐ。



「……まだ、時間はあります。薔薇のことは、わたしに任せていただけませんか?」


「だが、ローズ。お前の力は知っているが……」


「必ず…必ず、明日の夜までには薔薇を元通りに咲かせてみせます!
この城の庭師として、必ず……!」



お願いしますっ、と頭を下げる。


無茶なことを言っている自覚はある。


でも、アレン様とシェイリー様にわたしのせいで恥じをかかせることになるなんて……


そんなの、絶対にダメだから。



「……分かった。ローズに任せよう」


「!!ありがとうございますっ」


「だが、無理はするな。分かったな?」



それにわたしは頷きを返す。


アレン様もシェイリー様も、わたしの力の危険性を知っているからこうして心配をしてくれる。


そんな優しい人たちにわたしもわたしのできることを返さなければ。



「ローズ、私たちにできることはある?」


「シェイリー様……」



わたしは少し考えてから、わたしが再び二人のところへ来るまでは、庭に誰も入れないで欲しい、と言った。


集中力を削がれるかもしれないし、何よりわたしの力に影響を受けてしまうかもしれないから。



「では、よろしくお願いします」



頭を下げて、わたしは二人のもとを後にした。


向かう先はわたしの部屋。


とりあえずのために飲み物を用意しておかないと、喉が潰れてしまう。







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