それは薔薇の魔法




そして傾きかけている太陽。


寝ずに歌い続けていたおかげもあり、舞踏会には間に合ったみたいでホッとする。



とりあえず、アレン様たちのところへ行かなければ……


震える足に力を入れて、わたしは歩き始めた。


いつもより倍の時間をかけて歩き、アレン様とシェイリー様のいる広間に入る。



「ローズです……薔薇は、無事咲いたので、もう庭に入っても大丈夫です」


「そうか、ご苦労だったな」


「いえ、これも、庭師であるわたしの仕事ですから」



ぎこちなく笑みを浮かべるけれど、アレン様とシェイリー様は浮かない顔をしていて。



「ローズ…貴女、顔色が良くないわ。まさか……」


「っ大丈夫です。少し休めばよくなります。
それより、お二人は早く行かなければ……
今夜はアレン様とシェイリー様を祝う日なんですから」



二人ににっこりと笑ってわたしは背を向けた。


二人にはあぁ言ったものの、やっぱり命を使った反動のようなものがあって。


今すぐにでも倒れそう……


フラフラしながら、自分の部屋に向かうけれど。



「、あ……」



ガクン、と膝から力が抜ける。


頭痛がますます強まって、何も考えられない。



、ダメ……こんなところで倒れたら、アレン様とシェイリー様に迷惑が……


壁を頼りに立ち上がるけれど、歩くたびに倒れそうになる。


迷惑がかかると分かっているのに、体はどんどん重くなる。



もう、ダメ……



「ローズ?」



この、声は……



「シ、リル、さ……」


「ローズ!?」



グラリ、と傾く体。


暗くなる視界の中で、煌めく金と紫が光のように輝いていた。






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