それは薔薇の魔法
はぁ、と大きく息を吐くと扉の開く音がして、ビクッと肩が上がる。
顔を上げて、そこにいた人を視界にいれて、目を疑った。
な、ぜ…なぜ、ここにあなたが……?
「あぁ、目が覚めたのか」
ふわ、と安心したような笑顔を浮かべ、わたしを見るその人。
「シリル、様……」
茫然と見上げるわたしを見て、シリル様は次に眉をひそめる。
「ローズ、どこかに行こうとしたのか?」
「あ、えと……」
うまく働かない頭でなんとか頷く。
それを見てシリル様は更に眉をひそめる。
シリル様がそんな顔をするなんて。
わたし、何かしてしまったのかしら……?
悪い方向に考えてしまい、思わず顔を伏せる。
「ローズ、顔を上げて」
おずおずと声に従って顔を上げると、シリル様がわたしと目線を合わせるように片膝をついていて。
近くなった距離に、顔が熱くなった気がした。
「貴女は無理をして倒れ、高熱を出したんだ。
覚えているかい?」
無理…熱……?
もしかして、あの体のだるさや頭痛もそのせいで……
「それから丸二日も熱で寝込んでいたんだ」
「ふ、二日間もっ?」
そんな……
わたし、二日間も仕事を放棄していたなんて。
ただでさえ薔薇をあんな目に合わせてしまったのに、その上仕事を……
もう、アレン様にもシェイリー様にも、シリル様にも……合わせる顔がない。
「すみ、ません…シリル様に、ご迷惑を……
今、ここから出て行きますから、」
力の入らない震える足でなんとか立ち上がり、フラフラと扉に向かう。
けれど少し歩いただけでクラクラと目が周り。
「、ぁ……」
グラリ、と体が傾く。