それは薔薇の魔法
「はぁ……」
シリル様にも、アレン様やシェイリー様にも、わたしのせいでたくさん迷惑をかけてしまったわ。
わたしのせいで……
はっ!その上、今の状況ってシリル様にわたしのお世話をさせている状況じゃ……
わたし、なんてことを……
「ローズ、スープを……ローズ?」
「シリル様、」
あぁ、心境的には泣いてしまいそうだわ。
わたしのように身分の低いただの庭師が、この国の王になる人に世話をしてもらうなんて。
「すみません……」
「?よく分からないが、とりあえずスープを飲むといい」
差し出されたカップにわたしは手を伸ばす。
ほんわりとあがる湯気。
口をつけると体が温まって少しだけ心が落ちついた。
「あの、シリル様。聞いてもいいですか?
ここ、わたしの部屋ではないのですけれど、」
「あぁ、ローズの部屋を私は知らないから、私の部屋に連れてきた」
「…………はい?」
連れて、きた?
じゃあ、ここはシリル様の部屋?
思わず唖然とする。
カップを落としそうになってしまった。
「す、すみません……わたし、」
「気にしなくていい。寝る場所は他にもあるしな」
でも、と言うわたしにシリル様は手を伸ばし。
そっと頬を包む。
「目の前で倒れたときは、心臓が止まるかと思ったよ」
「シリル様?」
どこか不安そうにシリル様の瞳が揺れる。
「だから私の目の届くところにいてくれ。
あまり、心配をさせないでくれ……」
近づく距離に思わずわたしは息を止める。
シリル様は固まるわたしの額にそっと口付けた。