それは薔薇の魔法
わたしが目を覚ましてから、すでに三日が過ぎた。
もう本調子近くまで回復していて、外も歩けるようになったので、わたしは今久しぶりに薔薇のもとへ来ていた。
美しく咲いている姿を見ると心が満たされる。
「よかった……」
だから、あのときは本当に血の気が引いたわ。
あんな無惨な光景、もう見たくない……
「あら、貴女……」
後ろからの声にわたしは振り返る。
そこにいたのは、
「リリアス、様……」
今日も見惚れてしまうぐらい美しく着飾ったリリアス姫。
いつもなら、わたしも見惚れてしまうけれど。
きゅ、と唇を噛み締める。
……もしかしたら、わたしの気のせいかもしれない。
なんの証拠もないのに疑うなんて。
けれど……
「リリアス様、一つ聞いてもよろしいですか……?」
確かめなければいけない。
わたしのような身分の低いものが、姫様に問いかけるなんて、畏れ多くて声が震えてしまう。
でも、ここで引くことはできない。
「前に、アレン様とシェイリー様の結婚記念日を祝うためのパーティーが開かれました。
そのとき、この城の薔薇が全て切られていたのです」
わたしが話しても、リリアス姫の表情は動かない。
冷たく光るような瞳に、手先が震えた。
「リリアス様が、したのですか……?」
あのとき見えた後ろ姿は、リリアス様だった。
証拠なんて何もない。
けれど……
「えぇ、そうよ」
「、!!」
違っていてほしいというわたしの願いは、あっけなく消えた。