それは薔薇の魔法
「シリル様」
ハッとして慌ててわたしはシリル様の手を振り払った。
声のした方を見ると、リリアス様がいて。
冷たくわたしを見る瞳に体が震えた。
「すみません、わたし、失礼します……っ」
「ローズっ!!」
後ろから聞こえた声を振り切るように、わたしは自分の部屋に走った。
「はぁっ……はぁ……」
扉を閉めて、ズルズルとわたしは座りこむ。
これで、いい……
これが、正しいの。
なのに……どうして……
「ふっ、う……っく、」
どうして、涙が止まらないの?
「…き、です………」
好きです、シリル様
大好きです
でも……
わたしは貴方と釣り合ってないの
だから、諦めなければならない
忘れなければならない
「ごめんなさい……」
呟いた声は小さくて、震えていて。
わたしの部屋に溶けて消えていった。