それは薔薇の魔法




楽しそうにしているシェイリー様を見ていると、いまさらやめて下さい、なんて言えないわ。


それにしても、



「すごいドレスの数……」



ここは昔、シェイリー様が着たドレスをしまっているクローゼット。


拉致されて、お風呂やエステ、というのかしら?


よくわからないけれどそんなことを午前中ずっとされて。


開放されたかと思えば、次はシェイリー様に連れられてこのクローゼットに。


さっきからシェイリー様に薦められたドレスを着たり脱いだり。



今まで簡単なドレスしか着てこなかったから知らなかった。


服を着たり脱いだりするだけでこんなに疲れるなんて……



「ローズ、こっちに来てくれる?」


「あ、はい」



周りのドレスに気をつけながら、わたしはシェイリー様のもとに向かった。



「このドレスはどうかしら?」



シェイリー様が手をとっていたのは淡いピンクとラベンダー、白を基調としたドレス。


小さめのレースやフリルが上品でかつかわいらしい。



「かわいいドレスですね」


「ローズもそう思う?
じゃあ今日の舞踏会ではこれを着ましょうか」



…………え。



「シェシェ、シェイリー様っ!?」



い、今舞踏会でこれを着るって、わたしが!?


わたしは何もこれを着るなんて一言も……


それに舞踏会って!


わたしはそんなところに行けるような身分では……!!



「あら、私のお墨付きだもの。バレても大丈夫よ」


「ですが……」


「これは貴女のお婿さん捜しも含めてるんだから、ね?」



結局、わたしがシェイリー様に勝てるはずもなく。


あれよあれよという間にドレスに着替えさせられて。


あぁ、どうしてこんなことに……






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