それは薔薇の魔法
信じられない……
「……これが、わたし?」
お化粧ってこんなに変わるのね。
思わずマジマジと鏡の中の自分と見つめあう。
「うふふ、きっと今夜の舞踏会はみんなローズに釘付けになるわね」
「そ、そんなことは……」
「いーえ。絶対にみんなローズにメロメロだわ!」
「メ、メロメロって……」
シェイリー様、その自信はどこから出てくるのですか。
「さ、わたしも準備をしなければね」
ローズは部屋にいてちょうだい、というシェイリー様に従ってわたしはソファの上でおとなしく待つ。
「はぁ……」
いまさらだけれど、わたし、いいのかしら……
なんの教養もないのに、ただの庭師なのに。
こんな綺麗なドレスを着て、舞踏会に出るなんて……
せめて、アレン様とシェイリー様の顔に泥を塗るようなことはしないように気をつけなければ。
「ローズ、待ったかしら?」
「いえ、そんなことは……」
あぁ、いつ見ても着飾ったシェイリー様は美しい。
シェイリー様のドレスは落ち着いたロイヤルブルー。
胸元のダイヤのネックレスがシンプルでかつ上品で、シェイリー様にとっても似合っている。
「まだ時間があるわね。
緊張をほぐすためにも少しお話しましょうか」
「は、はい」
「うふふ、そんなに固くならなくても大丈夫よ」
と言われても緊張してしまう。
わたしのような者が舞踏会なんて……不安しか残らないわ。
「大丈夫よ、いざとなったら助けてくれるわ」
「え…?どういう……」
「あら、これは言っちゃダメだったかしら?
まぁでも大丈夫。ローズは今日の舞踏会、楽しんでいればいいのよ」
「はい……」
疑問を抱きながらも、シェイリー様はただ微笑むだけで。
和やかな会話をしながら、いつの間にか舞踏会の時間になっていた。