それは薔薇の魔法
幸せの未来
露が朝日を吸収して、キラキラと輝いている。
今日も美しく咲いている薔薇たちを見て、わたしの顔には笑顔が浮かんだ。
「お母さま?」
繋いだ手を辿るように視線を移動させると、大きな瞳とぶつかった。
澄んだ光を灯す紫の瞳と、カールした亜麻色の髪。
ふっくらとしている手をぎゅう、と握りしめている姿に頬が緩む。
「ジノ、どうしたの?」
目線を合わせると、ジノはこてん、と首を傾げてわたしを見る。
「お母さま、そのばらを見るときだけ、お顔がやさしいです」
「まぁ」
自分ではそんなつもりはなかったのだけれど、やっぱり無意識かしら。
それとも子供は敏感だからかしら。
どちらにせよ、他の人からもそのように見えているのなら気をつけなくては。
「お母さまっ!」
近づいてきた音に目をやると、そこには金色の髪を二つに結い、くるん、としたローズピンクの瞳を持った少女が。
パタパタとこちらにきたその体を抱きしめると、ふわりと優しい香りがした。
「やっぱり、お母さまもジノも先に行ってしまったのね!」
「ごめんなさい、レイラ。怒ってる?」
「怒ってはないけど、レイラも一緒に行きたかった……」
ムスッと少しむくれる姿が彼にそっくりで、愛しさを感じながらレイラの頭を撫でる。
「でもレイラが一緒に行ってしまえば、お父さまが一人になってしまうでしょう?」
「でも……」
「今度は一緒に行きましょう、ね?」
「、うん!!わっ」
無邪気な笑顔になったレイラの体が浮く。
「レイラ、お父さまよりお母さまの方がいいのか?」
「そ、そんなことないけど、嬉しくて……」
慌てるレイラに対してクスリと笑うその瞳には、慈しみの心が映っていた。
「お父さま、ぼくも……」
ジノが手を伸ばすとレイラが下りて、代わりにジノがその腕の中におさまる。
レイラはジノを羨ましそうに見つめて。
ごく当たり前だけれど、そんな光景に幸せを感じる。
「ローズ」
わたしは差し出された手に自分の手を重ねた。
背後では、紫の薔薇とピンクの薔薇が仲良く並んで咲き誇っていた。
Fin.