君色-それぞれの翼-
「あー、入試まで1ヶ月きったよね…。」
あたしは焦って話を逸らした。
でも出した話題は大して明るいものでも無く、危機感を感じさせられただけだった。
受験日は1月16日。
受かる自信は、まぁまぁ。
過去問では合格ラインに達しているが、今年はレベルが上がっているらしいし、面接もある。
そんなことを考えてみると、不安になってくるものだ。
「もしさぁ…あたしが落ちたら…戸谷君何て言う?」
また縁起でもないことを言ってみる。当然戸谷君は驚いたような顔であたしを見る。
空気が重くなったので、あたしは「…なんてね。」と言ってまた話を逸らそうとした。
こんなことを聞いたのは、戸谷君が自分をどんな風に思っているのかが知りたかったから。
それを目当てに言っただけ。
「…落ちなけりゃ良い。」
あたしが期待を忘れようとした時、戸谷君は言った。
そんな言葉では、何て思っているのか分かるはず無い。
でも不思議に…心が温かくなって、自信が持てる様な気がした。
「それだけのことだろ。」
その言葉に納得し、不安も消えていった。